犬の涙やけ(流涙症)

目からこぼれ落ちた涙が原因で、まぶたの周りの毛が茶色に着色されます。

着色だけで問題がない場合もありますが、皮膚の炎症や、においを伴うことがあります。また、涙が流れ出ることで涙の量が足りなくなり(ドライアイ)、様々なトラブルの原因となることもあります。

涙やけが見られた時は以下の3点を確認してみて下さい。

 白目(結膜)が赤くないか

 目ヤニが多くないか

 目を細めたり、シパシパすることがないか

このような症状が見られた時は、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

上記の症状がなく、涙やけだけが気になる時には、以下の方法を試してみてください。

毎日、目の周りのケアをしてみる

ケア用品には洗い流し用の目薬、拭き取り用のコットン、目の周り専用のシャンプーなどがあります。目の周りの涙を拭き取ることで、涙やけの着色が改善することがあります。この場合、目の中に入ってしまっても問題が起きにくいものを使用するようにしましょう。擦りすぎにも注意が必要です。市販のものをお使いいただく時はご使用前にご相談ください。

毎日、目薬をさしてみる

目薬は薬の成分が入っていない人工涙液(涙の代わりの目薬)を使用します。目薬をさすことで涙や目ヤニを洗い流すことができます。頻度は1日2回から3回程度です。目薬をさしたあとに、目ヤニ・涙の拭き取りを行うと効果的です。目薬については目薬のページをお読みください

ごはんを見直してみる

涙やけ用のフードが多く販売されていますが、特定のフードが涙やけに効くという事は証明されていません。ただ、フードの変更する事により涙やけが改善することがあります。もし、食事制限がないようでしたら、いくつかのフードを試してみてもいいでしょう。皮膚の痒みなどアレルギーの症状がある子は、アレルギー用の処方食を試してみてください。

涙やけの改善が見られるようでしたら、フードの内容と与えた期間をメモに残しておきましょう。

涙やけの原因と治療

涙やけの原因は多岐に渡ります。

涙の仕組みをおさらいします

涙腺・瞬膜腺から分泌された涙は、目の表面を覆った後、目の表面から蒸発したり、一部は目頭にある涙点へ排出されます。排出された涙は涙小管、涙囊、鼻涙管を通過して、鼻や口の奥に流れ出ます。

正常な状態だと、まぶたからこぼれる落ちる涙はごくわずかです。

涙が排出できない

涙は涙点を通って目や鼻の奥に流れます。排出ルート(涙点、涙小管、涙嚢、鼻涙管)に異常があると、涙がまぶたから溢れます。水道の排水口にゴミが詰まり、水が溜まって溢れ出てしまう状態とよく似ています。詰まり具合はフルオレセイン染色液を用いて確認します。生まれつき涙点が閉鎖・狭窄している場合もあります。

涙管の詰まりが明らかな場合は涙点から細い管を通して、鼻涙管洗浄を実施することもあります。

涙が多く出てしまう

刺激により涙がより多く分泌されることにより、涙があふれます。スリットランプ検査でまぶたの形や逆さまつ毛などを確認します。物理的な刺激のこともありますが、結膜炎・角膜潰瘍など違和感や痛みを伴う場合も涙が多く出ます。

刺激になっている逆さまつ毛があればそれを抜去します。結膜炎、角膜潰瘍などはその治療を行います。

涙が目の表面にとどまっていられない

涙は眼表面を覆うように存在します。その保持が弱くなると目から溢れてしまいます。この③の要因はいくつかあります。

目頭に毛(逆さまつ毛)が生えている。毛が目の表面に触れ、吸い取られるように涙がこぼれます。シー・ズー、ラサ・アプソ、チベタンスパニエルなどの短頭種によくみられます。毛を抜去したり、程度により手術が必要になることがあります。

まぶたの形がおかしい。解剖学的に眼瞼の形が不完全なため、涙の排出効率が悪くなります。トイ・プードル、マルチーズや、シー・ズー、パグなどにみられるタイプです。程度により瞼の矯正の手術が必要になることがあります。

マイボーム腺機能不全。涙の質が低下すると目の表面にとどまる力が弱くなります。マイボーム腺の状態を整える治療を行います。

ドライアイがある

ドライアイ(涙が少ない)なのに、涙やけ(涙があふれる)が起こるのは一見矛盾しているように思いますが、ドライアイに関連して涙やけが起こることがあります。この場合はドライアイの治療(涙の量と質をよくする治療)が必要になります。

このように涙やけの理由はさまざまです。原因が①だけではなく、①・③だったり、全てだったりということもあります。原因が多岐に渡るため、一つの治療方法ですっきりできるものはありません。ただ、治療を組み合わせたり、毎日ケアを行うことで、徐々に症状を改善することはできます。

涙やけの時はスリットランプ検査STTフルオレセイン染色検査などを実施します。原因に合わせた治療が必要になりますので、涙やけでお困りの時はどうぞご相談ください。

流涙症の治療前と治療後です。涙やけは良くなりましたが、毎日のケアは必要です。